2013年4月12日金曜日

ヨシモト社長の本

吉本興業の社長 大崎洋氏の一代記、
「笑う奴ほどよく眠る 吉本興業社長・大崎洋物語」
が発売になる。

表紙の人形と写真は、友人の人形作家、石塚公昭氏の作品だ。

最初に、吉本の社長の自伝だと聞いたとき
「あぁ、林正之助さんか」
と思ったら、現社長であった。

そもそも石塚さんは
とっくに鬼籍に入っている人を
現代に蘇らせるのが上手い作家なので
今もなお、一線で生きている人だとは
思ってもみなかった。

しかし、写真は
「まことを写すという意味の写真という言葉が大嫌いだ、まことなど画面に入れてなるものか」
とも書いているのが石塚さんなのだ。
(それでいて「写真はまことである、という錯覚を利用することばかり考えている」らしいが)

この、今、一線で活躍する大崎社長と大阪は
表紙から、どんな匂いを醸し出しているのだろう。
早く実物が見てみたい。

しかし、この本の表紙に彼の人形を、と発案した人も
面白いなぁ。

 

2013年4月11日木曜日

「ベルク」がある新宿

新宿に行ったついでに
ぶらぶらした。

久しぶりのぶらぶらだ。

何回かメールを見たが
いいのか悪いのか
重要なメールは何も来ていなかった。

途中、「ベルク」でジャーマン・ブランチを頼んだ。

カウンターで待っていると
間違えてホットドッグが出てくる。

それでもいいですよ、と言おうとしたら
厨房の2人が、さささっと作り直してくれた。

何ごともなかったように。

レジのおねえさんが、2人に「すみません、間違えました」と
明るく声をかける。

なんだか、その空気がよかった。

他の店なら、申し訳ありません、と客に向かって
時に必要以上に謝るのが常だろう。

でもそれをせず、客の心を波立たせる前に
おさめたのだ。

店内は相変わらず混み合っており
ようやく、きちきちと並ぶテーブルの一番はしっこを確保した。

向いに座る椅子もない、お一人様席に
壁にひっつくようにして座る。

店に入ったときはレゲエが流れていたが
今は、Lovin Youが聞こえている。

ジャーマン・ブランチは
黒と白のパンが一切れずつと、2種類のパテに、ザワークラウトとハム。
それだけなのだが、何しろパテがうまい。

ネットで☆なんかつけるなよ~
これに☆付けるのは無粋だよ~ と
思いながら、隣の人に肘がぶつからないように食べる。

隣の背広のおじさんは2杯目のビールだ。
正確には「エーデルピルス」だ。
長くエーデルワイスだと思っていた。
だいたいビールの名前だと思わなかった。

これがまたやけに美味しそうなのだ。

ぎゅうぎゅうだし、張り紙はいっぱいあるし
雑然としているのになんだか、ありがたい。

皆、それぞれ自分の身体の大きさに見合うスペースで
それぞれのことをしている。

2人のテーブルも、声高に話している人はいない。

ブレンドを飲みながら、写真を撮らずに紹介する、ということを思う。

食べもんの写真はアクセスが増えるという。
私も食べもんの写真は嫌いではない。

でも、川本三郎さんの本でも、なぎらさんの本でも
武田百合子さんの本でも、写真はないか、ほとんどないのに
目の前に景色も匂いも音も浮かび上がってくる。

店の名前も、住所も、電話番号もあえて載せる必要なんてない。

ただ、この世にあるということは、これでもかと伝わってくる。

そういう文章を書きたい。

次に、新宿という街のことを思う。

学生のころ、「新宿と渋谷、どっちが好き?」と聞かれて
少し迷ったが「渋谷」と答えたら
友だちが「そうなんだ」と少し笑った。

新宿、と答えた方が大人っぽいムードなのはわかっていた。
だが「東急ハンズ」のある渋谷が好きだったのだ。

今は、迷わず、新宿である。

ジュンク堂がなくなったとき、あぁ、もう終わりだと見放しかけたが
まだ「ベルク」があるではないか。
(そう、ディスクユニオンもあります)

ベルクがあるから新宿が好き。

新宿には、まだいくらか迷い込める隅っこが残っている。



http://www.berg.jp/ (公式)

http://ameblo.jp/love-berg



2013年4月9日火曜日

生活無能力者

移動中に佐野洋子 さん を読み続けている。

だいたい2つのトピックくらいしか読めない。
あふれ出す言葉のエナジーが強くて、いつも表紙を閉じてしまう。
そして悲しい話でもないのに、泣きそうになる。

以前は、佐野さんと友だちになれたらどんなに良いだろうと妄想していたが、
とてもムリだと思うようになった。

そばにいたら、かなわないし
私は、せこいし、センチメンタリズムから抜け出せないところもあるので
罵倒されるのではないだろうか。

佐野さんは、よく隣に住みたいかどうかで
人を判断する。

佐野さんと友だちはムリでも
隣に住んでいるのなら
距離感はちょうどいいかなと思ったりもする。

その佐野さんが、
「お友達になりたかったが、いっぺんにはじき飛ばされそうな気がした」
と羨望の前に降参したのが、森茉莉である。

森茉莉は“生活無能力者”だったというのを知ったときは驚いた。

こういうインテリな一人暮らしのばあさんは
クロワッサン的な暮らしをしているものだとばかり思っていた。

それで85年も生きたのだ。
2度も結婚して子どもも生んだのだ。

ポンコツを自負する私としては
他人事とは思えない。
だが、北向きの部屋を好んだ森茉莉に比べれば
陽の当たるところにせっせと洗濯物をぶら下げ直している私は
まだまだ、だと思わずにおれない。

昔、下北沢のタウン誌を作っているとき
友人が森茉莉さんを取り上げるため
彼女が一日中過ごしたという「邪宗門」に取材に行ったことがある。
(邪宗門は今もある)

そのときは、モリマリ が好きだということに
酔っているような気がして
と冷めた目で見ていた。

あのとき、もっと森茉莉さんに夢中になっていればよかった。

調べていたら、森茉莉のツイッターbotを見つけた。

https://twitter.com/Caprice_de_Mari

怖い、怖い。
森茉莉が押し寄せてくる。