2011年1月8日土曜日

出るぞ! レス・ポール大名鑑

ブルース・インターアクションズから
『レスポール大名鑑 1915~1963 写真でたどるギブソン・ギター開発史』が
発売されるそうだ。

304ページオールカラー! 2500部限定!
ご予約をおすすめします~とbsr編集長。 


先に発売された
ブルース・ギター大名鑑 写真でたどる名器とブルースの歴史』 (P‐Vine BOOKS)
』も
ブルースマンの使っているギターは? とページをめくりながら
ブルースの時間の流れを感じることのできる素晴らしい本だったが
これはさらに重みのある内容になりそうだ。

何度かブルースを取りまく歴史について原稿を書いてきたが
その都度、あれ? この時代にギブソンの335ってあったんだっけ?
ベースってあったんだっけ?
ハーモニカっていくらで買えたんだっけ?
と、意外に基本的なところがわかっていないことを感じていた。

レコーディング史ではない視点から
音楽の歴史を解説した本は大いに歓迎したい。

私が最初にレス・ポールを意識したのは
クラプトンでもジミー・ペイジでもなく
竹田和夫だった。
レス・ポールが、ギターではなく人の名前だと知ったのはいつのことだっただろう。
「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」を聞いたのなんて、もっと後だ。

その流麗なプレイに魅せられたのはもちろんだが
人となりも気になって仕方がなかった。

戦後まもなく多重録音を始めたり、
アナログディレイマシンの原型を作ったりする
柔軟な思考と、探求心や凝り性っぷり。
私生活では3度の結婚・離婚。大事故からの復帰。
そして90歳を過ぎてなお生涯現役でステージに立ち続けた。
ウィットに富んだインタビューでの受け答えや
飄々とした姿も、魅力的だった。

そういえば数年前、レス・ポールの生涯にスポットをあてた
映画があったっけ。

レス・ポールの伝説 コレクターズ・エディション [DVD]

本は残念ながら、もう手に入らないようだ

レス・ポール伝―世界は日の出を待っている〈上〉


そもそも私は楽器の構造とかそういったものには疎いし
世の多くの男性方ほど、興味があるわけではない。

むしろ、その人が一人の人間としてどうやって生きたのか
そしてその過程でどのように音楽と関わり、表現したのかに
関心を持って音楽を聞いている。

舞台だけ観ておけばいいという人もいて、
それはそうかもしれないが
志ん生が私生活を含め、まるごと志ん生として魅力的であるように
ミュージシャンも、生きることそれすべて芸であり
芸がまた、人となりを映していることもあるだろう。

私はそういう視点を大切に音楽を聞いたり
紹介したりしていきたい。

もちろ必要以上に思い入れないよう
注意しなければいけませんが。

話は戻って、レス・ポールの映像は
どれを見てもハッピーな気持ちにさせてくれる。
びっくりテクニックの映像もいろいろあるけどその中で
メリー・フォードとのギター夫婦漫才風のこのシリーズが
ほのぼの感もあってスキです。

2011年1月6日木曜日

チャックベリー84歳

チャック・ベリーが1日夜シカゴで演奏中に倒れたというニュースを
小野島大さんのTwitterで知った。
倒れたことがショックというより、
倒れてもなお客前に立とうとし、
無理矢理ドクターストップで連れ出されたというから壮絶だ。

しかも彼は病院に向かわず、自宅へ戻ったという。
ゴトウゆうぞうさん風に言えば、大正15年生まれの84歳。
大丈夫なのか。

ローリングストーン誌
http://www.rollingstone.com/music/news/chuck-berry-collapses-onstage-in-chicago-20110103

こちらには日本語のニュース解説もある。
http://www.afpbb.com/article/entertainment/music/2781150/6628625

シカゴ・トリビューンには、ギターを抱えチューニングを始めたのに
まさにステージから
連れ出されようとするベリーの姿が動画で紹介されている。
なんと! 背中がさみしい。

そのチャック・ベリーは
私のアタマの中にいるダックウォークのチャック・ベリーではなく
派手な服を着たおじいちゃんだった。

もうゆっくりしてもいい年齢なのに
もうあの頃のようにはギターが弾けないのに
彼はチャック・ベリーで在り続けようとして
決して立ち止まらない。
彼自身がスタンダードなのだから
だれか他の人の曲を演奏するなど考えられないのだろう。
ヘイル!ヘイル!ロックンロール』を観てもわかるが
彼はお金にうるさかった上に、人を信じられぬまま、ここまで来てしまったようだ。
だから尚更、
あくまでメイベリーンを演奏しようとするその姿を想像するだけで泣けてくる。

http://www.chicagotribune.com/news/nationworld/sns-viral-video-chuck-berry-sick,0,6240241.htmlstory

チャック・ベリーは、昨年日本でも公開された『キャディラック・レコード
そっくりさんが出演していたっけ。束の間のシカゴ・ブルース人気をあっという間に取って代わった
時代の寵児という描き方がすごくわかりやすかった。

そういうベリーも、実はブルースを演奏させたら天下一品だ。
他の多くのアフリカン・アメリカン同様、
ルイ・ジョーダンやTボーン・ウォーカーを聞いて育った彼のブルースな一面がよく表れたアルバムがあるので
機会があればぜひ一度お聞きください。






◇ シカゴつながりで

シカゴ・トリビューンを眺めていたら

Chicagoan of the year in music: Syl Johnsonl

という記事を見つけた。
シル・ジョンスンはギターも弾けば、ハーモニカも吹くし
歌わせれば素晴らしいサザン・ソウルも披露する。
下町の紳士といった風貌に
“Come On Sock It To Me”のようなファンキー・チューンがまたよく似合う。
ブルースとソウルの垣根を感じさせない
稀有なアーティストだ。

アル・グリーンで有名な"Take Me to the River"だって
このシル・ジョンスンの方がヒットした。カッコよさではシルに軍配をあげてもいい。


以前編集した『ブルースの世界オフィシャル・ガイド』(そろそろ新しい版が出したい~)
の巻頭カラーページにも快く協力していただいた。

なんだか自分のことのようにうれしい。

この巻頭カラーでの
レストランで料理にかぶりつくシル・ジョンスンさん最高です。
聞くならまずはこのハイ時代を。
アマゾンではmp3でもダウンロードできるようになったのですね。






そういえばお兄さんのジミー・ジョンスンも捨てがたい味の持ち主です。
オーティス・ラッシュと共に来日した際
パワフルな弟とは似ても似つかない
そのハイトーン・ヴォイスを聞いて膝の力ががくっと抜けたことを思い出す。
確かに汗だくのブルースは期待できませんが
繊細な持ち味がなんともくせになるギタリスト/シンガーだと思う。

しかしシルのお兄さんということはジミーも高齢ですね。シカゴ・トリビューンに、
シカゴで行われる音楽フェスを取りまく厳しい状況について書かれた記事もあった。

シカゴもまた新旧交代のとき。古き良き財産と街のプライドを
新しい世代へ伝えようとしているのだ。

 http://leisureblogs.chicagotribune.com/turn_it_up/

2011年1月4日火曜日

春 ダルマさん転がる

あけましておめでとうございます。
今年もそろそろ仕事初め。どうぞよろしくお願いいたします。

カメラマンのKさんの年賀状に「昨年もよい年になりました」
という一文がありました。

挨拶代わりのように、あちこちで「キビシイ年になりそうだ」と
ついつい言ってしまう自分に対し、新年3日にして既に反省モード。
自分から運は呼び込まないと。

そこで、よし!と近所の神社へでかけた。
決して広くはない境内に、お札を売る急ごしらえのテントが設置され
大きなどんど焼きの穴からたき火のように火の粉があがっている。
近くに住む人が普段着で、ふらりふらりと訪れては
お賽銭を投げるときだけは神妙な顔をして手を合わせる。

二礼一拍手一礼。
いつもはしょってしまうのだが、今日はぺこりぺこりと二度頭を下げてから
10円玉を賽銭箱に放った。
昔から親に、「おねえさんのお辞儀は、いつも頭をちょこんと下げるだけ!
ちゃんと深々と頭を下げないと」と言われてきたのだが、
なかなかこのせっかちは直らない。

雅楽が鳴ってお賽銭箱の向こうで、神主さんが祝詞(というのだろうか)をあげはじめた。
60歳は過ぎているだろう夫婦らしい男女が、少し緊張した顔で
じいっと座って聞き入っている。
何をお願いするのだろう。
気になってしばらく賽銭箱の横に立って
のぞいていたのだが、後からお参りする人に
邪魔だなぁという顔をされたの最後まで見届けられなかった。

お参りを済ませた人たちは、
まるでそれがコースになっているかのように
テントのところでおみくじを引き、お札やお守りをいただいている。

おみくじは小吉だった。
「一にも努力二にも努力」だそうである。
確かにそれ以外に何があるというのか。ありがたく心に刻む。
横で大きな声でおみくじを読み上げていたおねえさんも
「神様、わかっていらっしゃるなぁ」
と母親らしき人と笑いあっていた。

なんとなく今年もダルマを買うことにする。
ダルマの赤は法衣の赤だと聞いたことがあるが
今やダルマも赤だけでない。
風水ダルマだとかで、恋愛にはこれ、仕事にはこれ・・・と
カラフルだが、そんなにダルマばかり並べるわけにもいかない。
ここはやはり赤であろうと
えいやっと、昨年より一回り大きなダルマをいただくことに。

「はい800円のこちらのダルマでよろしいですか」
と巫女さんが後ろを向いて箱から取り出したそのときだ。
袋に入れようとした巫女さんの手から、赤いダルマさんが、ごろんと落下。

ええっ。

これは何か悪い予兆か。
頭の中でよくない言葉がどどどどっと湧き出してくる。
申し訳ありません、とあたふたしながら拾い上げる巫女さん。
別の赤いダルマに取り替えてはくれたのだが
周囲の巫女さんも苦笑い。私も苦笑い。

しかし、ここは今年の目標、ポジティヴシンキングだ。
「はじめのい~っぽ!ダルマさんが転んだ!」
そうだ。これは初心に戻れ、という啓示なのだ、と思うことにする。

あの転がったダルマさんはどうなるのだろう。
段取りを間違えたダンサーのように、裏へ連れて行かれて
出番はなかったことになってしまうのだろうか。

何より、この分でいくと、今年も
街を歩けば何かが巻き起こる「取材運」は堅調なのかもしれないなぁ。